遥かなる明日へ ~画家松井大門の七転八起き~

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2008.09.25 Thu 僕を変えたゲンコツと網


P9224210 のコピー

釣りの帰り道の傍らに、フジアザミが咲いていました。

37歳の時、今日子と一緒になりましたから、もう19年も前の話です。

よく山へ一緒にスケッチに行きました。ある日、彼女がこう言うのです。

「あんたよく自然の絵を描いているけど、あんたには、いい絵は描けんよ」
彼女の言葉は何時もつっけんどんで短く、解りやすい説明がありません。
第一、絵も描いていない彼女にこんなことを言われ、少々腹も立て、(かなり)

「何でや、こんな一生懸命描いているのに」 
「そんなことぐらい、自分で考えて」

頭の悪い僕は、ああでもない、こうでもないと、色々考えても解らないので、しまいには頭にきて

「わからんから聞いているんやろ、答えを述べよ」
「あんた平気な顔で,煙草を外に捨てとる、そんな人に、いい絵が描けるわけないやろ」

悔しいけど返す言葉がありません。

僕はヘビ-スモウカ―で、一日に60本ほど煙草を吸っていて、山の中で何気なく、吸い殻を捨てていました。 勿論、火は消してからですが。
大好きな彼女に、こんなことを言われて、返す言葉がない、これほど悔しい事はありません。
こんなことを二度と言われないために、直すしかない。

「おお、直してやるわい」と、僕は啖呵を切りました。

2,3日たったある日、林道を気持ち良く走っていました。窓からは清々しい風、花が咲いていたり、鳥の声が聞こえたり、何も言うことなしです。
そんな時です、言葉もなく行き成り、車を運転している僕の左の頬に、彼女のゲンコツが飛んできたのです。

「何するんや行き成り、気でも狂ったんか、第一危ないやろ」
「あんた今,煙草捨てたやろ」

僕の右手を見ると、確かに今まで吸っていた煙草がありません。 習慣とは恐ろしい物で、無意識のうちに煙草を捨てていたのです。 僕はここでも悲しくも反論できず、唇を噛みしめたのです。
この後も、5,6回はゲンコツが飛んで来たでしょうか。
後10回ほど食らっていたら、僕は、マゾヒストになったかもしれません。(笑)
それでもまあ、このゲンコツの御蔭で、ようやく直りました。

僕は、渓流釣りが大好きで、よく、奥山へ行くのですが、何時も一つのポケットの中は、煙草の吸殻で一杯になります。

ある日の事です。この日も、暗いうちから車を走らせ、奥山に入りました。 車を止めてからも30分ほど歩き、谷に降りました。この谷は初めての谷で、なかなか釣れず、1時間余り上流に行ってからようやく、岩魚が釣れました。  釣った魚を入れるのに僕は、安物の、ナイロンの網のようになつているものを、腰につけていました。
ようやく釣れて、喜んで、その網に入れようとすると、確かに腰につけていたはずの網が、ないのです。

安物だったし、十分元もとったし、まあいいかと、木の細い枝を折り、それに岩魚をさして、この後4,5時間は谷を登りました。
20匹近く岩魚を釣り、気分良く谷の上の林道へ出ました。
今日子に作ってもらったおにぎりを食べ、山道を下り始めました。
何時も、岩魚を釣った満足感に浸りながら、花を見たり、鳥の声を聞いたりしながら、気分良く車まで帰るのです。

ところが、どうした事かこの日は気分が悪いのです。 岩魚も釣れたし、花も咲いているし、鳥だって鳴いてくれている。  なのにどうしてこんなに、気分が悪いのだろう。

何処かで落としてきた網の事が気になって仕方がないのです。
十分元はとったし、今日子には、穴が開いたから、ゴミ箱に捨てたとでも言えば良いではないかと、山道を下るのですが、気分は益々悪くなる一方です。
落としてきた網はナイロンなので腐ることはありません。  ずっとゴミとして残るわけなのです。

誰も見てないからいいじゃないか、それに落とそうとして落としたわけではないんだし、
それに、もう疲れているし、早く車に帰ろ、帰ろと、思うのですが、足は重くなる一方です。

自己問答も限界に達しました。 何をどう誤魔化しても、ゴミをしてきた事実は、事実。
それを知っている自分だけは絶対に誤魔化せない。 こうなったらもう、網を拾いに戻るしかない。

意を決して、車を降りた所からの捜索です。
幸いにして、20分位の所の谷川の大きな石の上に、落ちていました。
網を拾い、今度はもう落ちないようにと、しっかりポケットに入れるとようやく、気分が楽になりました。
足取りも見事に軽くなりました。

たったこれだけの事なのですが、僕にとっては、初めての経験でした。
今まで、そのつど都合のいい嘘をついたり、自分を誤魔化したりで、適当に生きてきた僕にとっては、
とても、衝撃的な事だったのです。

自分の弱い心に負けず、自分を誤魔化したりしなかった、初めての経験。
何だか、自分が、ちょっぴり強くなれたような気がして、とても嬉しくなりました。

この時、初めて気がついたのです。
人生は戦いだと言いますが、それは決して他人と戦うことではなくて、自分が自分の弱い心と戦うことなんだと。
弱い弱い自分の心だけと戦いながら、正直に、ありのままに、生きてゆこう。

39歳と何か月、この日ようやく、自分を見つけました。(39歳になってようやく、恥ずかしい話です)

僕は、何時まで経っても子供です。
この日も、こんなことで堪らなく嬉しくなってしまった僕は、
子供の頃、嬉しい事があるとすぐ、母ちゃんに報告していたように、今日子にも報告したのでした。

「そんな事、当たり前の事やろ」 と、 愛する今日子ちゃんの一言でした。

そんな当たり前の事が、39歳になっても解っていなかった何とも情けない僕でしたが、
この日を境に、自分が変わりました。

自分が自分を信じられるようになったのです。

優しい今日子ちゃんから飛んできたゲンコツと谷川の岩の上の網、
56歳になった今でも、つい昨日の事のようです。

帰り道、林道の傍らには、初めて見る、フジアザミが咲いていました。

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Comments

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mellon : URL こんにちは。

#mQop/nM. Edit  2008.09.26 Fri 18:05

相変わらず面白くて、しかも心が温まる話をありがとう。

旦那さんを立てる奥さんは良妻だと思う。
今日子さんを立てる大門さんは男らしいと思う。

かみさんを立てて、おちゃめでジョークが冴えてて
仕事は有能なコロンボ刑事を思い出しました。

松井大門 : URL 何時もありがとうございます

#- 2008.09.26 Fri 19:30

何時も、嬉しいコメントありがとうございます。
mellonさんに知り合えて、とてもうれしいです。

ブログを思い切って初めて良かった。心からそう思います。

まだまだ、話は一杯ありますので
どうか、末長くおつきあい下さい。

葉っぱ : URL いい話聞いちゃった♪

#yDt/5Vf6 Edit  2009.09.02 Wed 00:17

フジアザミ、数年前に初めて見てあまりの愛らしさに思わず車を降りて見てれました

花の思い出とともに素敵な思い出・・・
自然が語りかけて来たのかな?

こんな昔の記事に書き込みしちゃった・・・

松井大門 : URL 葉っぱ ちゃんへ

#- 2009.09.02 Wed 00:27

ギャァ~
見られちゃったぁああああ!!!!!

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